薫子様、一大事でございます!
「とっても綺麗ですね」
「今からじゃ想像もつかないだろう? これでも、昔はそれなりに器量良しだったんだよ」
「今でも十分綺麗ですよ?」
「やだね、薫子ちゃんってば、お世辞はよしとくれよ」
バンと肩を叩かれた。
決してお世辞ではない。
張りだってツヤだって50代には思えないほど。
私が手に取った写真を横から覗き込む芙美さんが、照れくさそうに笑う。
目元に浮かんだシワは、幸せの証に見えた。
「旦那様とは、どこで知り合ったんですか?」
「いやだねぇ、馴れ初めかい? 薫子ちゃんに自慢できるような話じゃないよ」
「そんなこと言わないで聞かせてくださいよ。芙美さんを射止めた旦那様って、どんな人だったんですか?」