メランコリック
その中で一際異彩を放っていたのが、藤枝汐里だった。
地味な服装、真っ黒すぎる髪、沈うつな表情。

暗くて、ノリが悪くて、飲み会やメシ会は全部パス。
笑っているところなんか、誰もみたことなくて、同期で仲の良いヤツはいない。

完全な個人主義者。

高校も大学も仲間重視、コミュニケーション重視でやってきた俺からすると信じられない存在だった。

そんな女とまさか配属か被るとは。


「相良くん」


気付くと、その藤枝が間近にいた。
真っ黒な瞳が俺を見ている。化粧は最低限しかしていないので、薄い色味の唇がやたらと目についた。


「この傘、他にカラーバリエ無かったっけ」


俺は藤枝の唇をじろじろ見てしまった気まずさから、いつも以上に不機嫌な顔を作った。


「今は2色のみ。本社からのリスト、見てないのかよ」


「ごめんなさい。見落としてた」


藤枝は素直に謝り、俺に背を向け持ち場に戻った。
本当は藤枝の過失じゃない。
バイトや先輩の兵頭さんが、あいつに通達事項を見せないことはよくあるからだ。

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