メランコリック
「腰低いっつうか、プライドない」


「バイトのアタシたちから見ても、あの人って意味わかんないですよぉ。毎日、楽しくなさそう」


「暗くて不気味っつうか。なんで、こんなオシャレ系のインテリア雑貨ショップにいるんですかね?」


レジ締めをやる人間が店の施錠をする決まりだ。今日は私。
つまり彼らはもうここにいる理由がない。
それでも聞こえよがしに私の悪口を言いながら、のんびり帰宅準備をしている。

よほど、私が嫌いなんだろうな。
冷静に考えてしまう。


「ホント、あいつが暗いから店の雰囲気悪いわ。マジでどっか飛んでくんねぇかな」


殊更大きな声が聞こえた。私はそちらを見ずに、天井にぶら下がったデザイン照明を数える。
細かいものはともかく、金額や物が大きなものはカウントするのが決まりだ。


「相良(さがら)さん同期なんでしょ?藤枝(ふじえだ)さんと」


アルバイトの子が言うと、大きな声を張り上げ、相良駿吾(さがらしゅんご)は答えた。
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