メランコリック
焼肉は断ったけれど、確かに相良の意見に逆らったことはあまりない。
面倒だから、……それが理由だけど。


「藤枝、もしかして俺のこと好きだろ」


相良が嘲笑を満面に浮かべ言った。
私がうろたえる顔でも見たいのだろうか。

私はいつまでもこの応酬を続けていたくないので、適当にあしらうことにする。
相良の言葉に頷いて、答えた。


「うん、そうかもね」


その時の相良の反応は妙なものだった。

彼の顔からいっぺんに嘲笑が消えた。
口元が「え?」という形に変わったけれど、そこから音は出ず、次に相良の頬が真っ赤に染まったのだ。

なんだろう、どうしたんだろう。

さすがに私も驚く。
相良は真っ赤になった顔でキッと私を睨んだ。


「バーカ、気持ち悪ぃんだよ。根暗女が」


そう言うと、相良は私を置いて非常階段降りていってしまった。


私はポカンその姿を見送るしかできなかった。
わけがわからない。

相良はわけがわからない。




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