メランコリック
この男は、自分のせいで私の髪が切られたことに責任を感じているのだ。
散々いじめておいて何を。

でも、相良は私の姿に罪悪感を覚えている。
だから、余計に絡んでくるのだ。


「来週……同期の飲み会がある。おまえも来るか?」


相良の口調が変わった。
戸惑うような声。

私はかすかに驚いた。誘われるのは初めてだ。
まさか、こんなタイミングで誘ってくるとは。

でも、私の答えは決まっている。


「ごめん、遠慮する」


相良がキッと私を睨んだ。
誘った自分を恥じるように、その頬に赤みがさしている。


「そーかよ!言うんじゃなかったわ、クソ女!」


相良は捨て台詞を残して、バックヤードを出て行った。

私は、相良の妙な行動の数々に困惑した。
触れられた髪。

胸のうちがざわざわと変な感触だった。



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