メランコリック
幼稚な俺は、謝れない代わりにあいつを傷つけ続ける。
睨んで、罵って、あいつが俺の前からいなくなるまで、これからもずっと。


「相良、ちょっといい?」


座敷の中ほどで飲んでいた俺の横に、無理矢理割り込むやつがいる。見れば、品川店の緑川笙子だ。


「なんだよ」


「藤枝汐里に飲み会の話、黙ってたでしょ」


いきなり本題。
緑川は形ばかりロックグラスを持って移動してきたが、長居する気はないようだ。
生徒会長か風紀委員かという態度だ。正当で堂々としている。


「誘ったよ、一応」


「ホント?」


「ホントだっつーの」


先週、やりとりのついでだったけど。
断ったのはあっちだ。

しかし、緑川と藤枝はそんなことを話す間柄なのか。
大学が同じというだけで、たいした交流はないと勝手に思っていた。
藤枝に親しい友人がいると思うと、なぜか胸に嫌な感情が過ぎった。

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