冷徹執事様はCEO!?
黒いロングドレスにキラキラ光るシルバーのハイヒール。

肌寒いのでラビットファーをあしらったショールを肩に引っかけ、手に持っているのは小さなクラッチバックのみ。

明らかに周囲から浮きまくった格好だ。

そのうえ、田中と一緒だったので、かさばる長財布は家に置いてきた事を思い出しハッとする。

こんなド派手な格好をしているくせに私は無一文だ。

「まあ、そんなに電車で帰りたいというのであれば、仕方ありませんね」

田中は諦めたように言うとパワーウインドウを閉めてしまった。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

私は慌てて窓を叩く。

「何ですか?」

再び、パワーウィンドウが開くと、田中は迷惑そうに眉根を寄せている。

「田中がどうしても、私に話を聞いてもらいたいっていうんなら、一緒に帰ってあげない事もないわよ?」

「結構です」

田中は再びパワーウィンドウを閉めようとする。

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