イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「なに?」
「いや、三田さんに言われた事で傷ついてんのかと思って」
「ああ、浮気はされた方が悪いとかいう話? あんなの、三田さんに言われる前から知ってるから平気」
「でも、言い返せてなかっただろ」
「別に三田さんの言葉に傷ついたからじゃないよ。
ただ……祥太との事で傷ついてるのは、別れるって道を選ばなかった私のせいだなと思っただけ。
最初の浮気で別れてればよかったのに、その時そうしなかったんだから……二回目以降の浮気で傷ついたのは自業自得だなって」

「三田さんの言う事も一理あるかもね」と笑いかけた私を、風間はじっと見つめて。

「あるわけないだろ」

真顔のままハッキリとした口調で言った。

「例え一理あったとしても、残り九理は祥太のせいだ。
おまえが自分のせいだなんて反省する事じゃない」
「……なに、九理って。一理あるって、確かにそういう意味ではあるかもしれないけど、それにしたって表現がおかし……」
「うるせーな」

顔をしかめて言った風間が後ろ頭をかきながら、整備室に戻ろうと踵を返す。
それから、私を振り返った。

「いいんだよ、おまえは悪くないんだから、それで」

ぶつかる、真剣な視線。
どこまでも私に優しい風間を真っ直ぐに見つめながら答えた。

「悪いよ。割合は違うかもしれないけど……祥太の浮気は、私と祥太の共犯だよ」

祥太だけが悪いわけじゃないと告げた私を、風間は少しツラそうな表情で見つめて。

「じゃあ、あの夜の事は、俺とおまえの共犯だな」

そう言って笑った。



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