イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「祥太、サッカー部だったから。私の頭にボールぶつけたのがきっかけで話すようになったの」
「ふーん。中一の時に会って……付き合いは、高三の時からだっけ」
「うん……。高三の夏休み前に告白されて、それから。
今日は……そういう、祥太との思い出を思い出したくてここに来たの」

そう言った私に、風間は「ふーん」とだけ返事をした。
何も考えてなさそうなトーンに、風間の様子をチラっと確認しながら「だから」と続ける。

「風間は帰っていいよ」

邪魔だとか、そういうわけじゃなかった。
風間は私にとって、気を使うだとかそういう相手ではないし、むしろ一緒にいても気が楽だ。
だから、どこに行くにしても一緒にくる分には構わないし、私自身ひとりで行動する事はあまり得意じゃないから助かる時もある。

それでも今日、来て欲しくなかったり帰っていいよなんて事を言うのには理由がある。

祥太との思い出を……祥太への気持ちを、見つめ直すためにここに来たからだ。
ここ最近感じなくなってしまった、祥太への気持ちを……取り戻すためっていうわけではないけど、今のままじゃどんどん祥太に対して薄情になってしまいそうで怖かったから。

そして、それを風間に付き合わせる事には抵抗があった。
風間の気持ちに……まったく気づいていないわけじゃなかったから。

「きっと、退屈だろうから」

そう言った私に、風間がゆっくりと視線を合わせる。
そしてしばらくそうした後、「別に邪魔しねーよ」と微笑んだ。

つまり、拒否だ。
優しい微笑みとともに返されたノーの返事に胸がじわりと締め付けられ……そっと目を伏せた。



< 55 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop