イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―



校舎の中にも校庭にも、祥太との思い出がたくさんまき散らされていて、そんな場所を通る度に自然と足が止まった。
私がそうすると、隣を歩く風間も何も言わずに立ち止まる。

そして、私が歩き出すと風間もまた。

中等部校庭のサッカー部が練習を行うグラウンド。球技大会で、周りに無茶ぶりされた祥太がダンクをしようと目一杯ジャンプしたけど届かずそのまま墜落したバスケのゴール。

高校の調理実習では、不格好なクッキーを作ってクラスの男子と大笑いして。
文化祭では、エアーバンドでボーカル役を務めて大盛り上がりだった。

自転車のふたり乗りを注意されて、先生に追いかけられながら逃げ出した校門。
いつも祥太が居残りや追試させられていた学習室。
自由登校になってから、たまにふたりで待ち合わせた図書館。

四時間目終了のチャイムと共に繰り広げられる、購買のコロッケパン強奪戦では、祥太は毎回身軽な動きでパンを勝ち取って、教室に戻ってくるとコロッケパン片手に私にピースサインしてたなぁと、教室のドアを見ながらぼんやり思う。

学校中、どこを見ても、祥太のへらっとした笑顔が気配を残していた。

空き教室の中からドアを眺めていると、風間が窓際にある腰の高さの棚に軽く寄りかかった。

三つ並ぶ校舎の一番北側の校舎にいるからか、日中だっていうのにそんなに日は差し込んでいなかった。
薄暗い教室に、遠くから文化祭のざわざわとした声が聞こえている。

< 57 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop