Sugar&Milk
「あの、敬語じゃなくていいですよ。俺の方が年下ですし」
「大学生?」
「はい。3年です」
「そうなんだ……」
思った通り大学生だった。大学3年ということは大体は20歳か21歳だ。思わず自分との年の差を計算してしまう。けれども只の年の差ではない。相手は学生なのだから立場の違いに余計に戸惑ってしまう。
「今日は付き合ってくれてありがとうございます」
「いえ」
「あの……橘さん」
「はい」
唐突に名前を呼ばれて身構えた。
「誘ったのは俺ですけど、今めっちゃ緊張してます。変なこと口走ったらすいません」
正直な言葉に微笑む。緊張しているのは中山くんも同じだ。私の顔が見られないのか前ばかり見ているから。
「私も緊張してるよ……だから色々とガッカリさせちゃったらごめんね」
「そんなことないです! ガッカリなんてしませんから」
中山くんの真剣な顔に心が揺れて必死に平静を装う。私のことをどう思ってくれているかは分からないけど、中山くんの思うような女じゃないかもしれないと不安になる。実際に長い時間一緒にいたら印象が変わってしまうかもしれない。
でもこの子、可愛い顔で笑うんだけど、ふとした時はカッコいいんだよな……。
横目で中山くんを見ると彼も頬から耳まで赤くしていた。感情がすぐに顔に出るのだろう。
こうして食事に誘ってくれるって、中山くんは私に好意を抱いてくれたのだと思っているけれど、それは勘違いだったらどうしよう。だってこの子は笑顔が印象的でイケメンと言われる部類だ。大学生で、カフェ店員。きっとモテるはず。だからなぜこんな子が私なんかに、と思ってしまう。年も離れているし、学生なら近くに女の子もたくさんいるだろうに。