Sugar&Milk

言いながら照れてしまう。私の言葉に中山くんは見たことがないような嬉しそうな顔をした。それを見て私も一緒になって笑う。

「このまま別れるのは名残惜しいですが、改札まで送りますね」

「ありがとう……」

中山くんは私が改札を通り、ホームへ入るまで見送ってくれた。こんなことも久しぶりで、本当にこの子と付き合い始めたのだと実感がまだ湧かないなりに照れてしまった。










中山くんとは頻繁に連絡を取り合った。ほとんどは彼からのメッセージに相槌を打つだけなのだが、懐かしい大学の様子やカフェの仕事内容を教えてもらったりして、意外にもやり取りが弾んだ。
あの日以来二人で直接会うことはできないでいたので、付き合っているという感覚は薄い。初めての年下彼氏が本当に私と付き合ってくれているのか、今でも夢じゃないかと思ったりもする。

会社の最寄り駅なのでカフェの前を通る度に中山くんは私に気づいたときに店の中からとびきりの笑顔で手を振ってくれた。その度にだんだんと実感が湧いてくる。私もぎこちないながらもガラス越しに手を振り返すと、カウンター内で中山くんの横にいた店員の女の子は不思議そうな顔をしていた。



◇◇◇◇◇



元カレとは大学生の時に付き合い始めた。当時はお互いの家に頻繁に行き来して同じ生活リズムで関係を深めていた。けれど就職してから会う機会が激減した。土日休みの彼と休みが不規則な私では連絡する時間さえすれ違う。会いたいときに会えない辛さが積み重なって、電話で不満を漏らすことが増えた。
ケンカしたかったわけじゃない。嫌いになったわけじゃない。でも優先するものが変わってしまった。
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