Sugar&Milk
お互いがお互いを大事にできなくなっていた。そんな関係は意味がないから一度しっかり話し合おうと時間を作って食事をした席で彼は私に別れを告げた。私を嫌いじゃないと言ってくれたけれど、二人の未来は明るいものにはならないってことは意見が一致した。
だから仕事を大事にして、もう恋愛はいいやと思っていた。
けれど立場も年齢も違う男の子が私の生活に入り込んできた。
お昼休憩に中山くんにLINEを送ることが日常になった。『次はいつ会えそうですか?』と2日に1回は聞いてくる。積極的に会いたがってくれるのは嬉しいけれど、やはり大学生と予定を合わせるのは難しい。私の仕事は土日にも出勤することが多いのだから。
「橘、最近嬉しそうだね」
スマートフォンの画面に見入っていた私に声をかけたのは同期の山本だ。長身の彼は画面をのぞき見ようとしたのか屈んで私に顔を近づける。
「そ、そうかな?」
思わず画面を山本から隠そうとしてしまう。
「いつも休憩中スマホ見てニヤニヤしてるし。新しい彼氏でもできた?」
「うーん……」
「何その煮えきらない感じ」
明るくて気さくな山本は誰にでも壁を作らず接する。同期としては頼り甲斐があるけれど、ノリが軽いのでプライベートについて触れられてもいいような人ではない。
「まあね……彼氏、かな……」
「あ、マジだ? おめでとう。どんな人?」
「年下」
「1つとか2つ下とか?」
「言いたくない」
「何で? 教えろよ」
「だって山本からかうもん」
「からかわないって。いいだろ?」
こういうところが嫌なのだ。プライベートにズケズケと入り込もうとしてくる。教えないといつまでも聞いてくるのも面倒なので「大学3年生だって」と仕方なく本当のことを言う。