Sugar&Milk

甘いクリームを口の中で溶かしながら朱里さんが着替える様子を眺める。恥ずかしそうに着替える朱里さんの細い腰をまた抱きしめたいとさえ思う。

「どう? 朝からケーキって特別な感じでしょ?」

昨夜と同じ服を着た朱里さんが俺の横に座る。それが当たり前のように。

「ほんと特別な朝です。朱里さんが横にいるから」

俺の言葉に照れたような顔をしてケーキをモグモグと噛む朱里さんの肩を抱いた。

「幸せな誕生日でした。ありがとうございます」

「こちらこそ……」

揺れた髪からはまた甘い香りがする。同じシャンプーを使ったのに自分のものとは違う匂いがするのは不思議だ。慣れたはずの香りですら彼女が纏うと特別だと思える。

「じゃあそろそろ行くね」

「え?」

食べ終わって立ち上がった朱里さんの名を思わず呼んで引き留めた。

「もう行くの?」

「一度帰って着替えたいから」

「そう……」

もう少し一緒に居たかった。甘い夜の余韻に浸っていたかったのに。けれど仕方がない。朱里さんには仕事がある。

「行く前に、いってらっしゃいのチューしたい」

「えっ……」

「早く。遅刻するよ」

玄関に行きかけた朱里さんは恐る恐る俺に近づいてしゃがんだ。そんな朱里さんの顔を引き寄せてキスをした。このままベッドに縛り付けてしまいたい。そんな衝動にかられる。

「また服を脱がせたくなる」

「何言ってるの!」

駄目元の呟きに朱里さんが顔を赤くした。そんな反応をされたら本当に行かせたくなくなる。
でも子供っぽいことを朱里さんに言ったりはしない。できる限り余裕のあるふりをしていたい。

「ほら、遅刻するよ。いってらっしゃい」

「いってきます」

そう言って愛しい彼女はドアを開けて行ってしまった。



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