Sugar&Milk

「え……なんで?」

「なんでって……価値観の違い?」

別れた理由まで聞いてくることに煩わしさを覚える。それにまだ浩輔と付き合っていると思われていたのか。別れてから2年はたっているのに。この集まりもそれくらい久しぶりだから仕方のない話題ではあるのだけれど。

「ごめん! 別れたの知らなくて浩輔呼んじゃった!」

「え?」

浩輔がここに来るの?

「ちょっと遅くなるって言ってたけど……あ、浩輔久しぶりー」

友人の視線を追ってその場の全員が個室の入り口を見つめた。2年ぶりに会った元カレの浩輔が「遅れてごめん。久しぶり」と笑顔で入ってきた。そうして私と目が合い複雑そうに笑う。
気まずい空気になっている部屋の事態を察したのか、浩輔は「朱里も久しぶり」と私の横にわざと座ってきた。

「ああ……うん。元気?」

私も無理やり笑顔を作る。嫌いで別れたわけじゃない元カレと再び会うことになるとは思わなかった。

「今も同じ会社にいる?」

「いるよ。浩輔は?」

「俺も同じとこ。なんと春から昇進決まりました」

「そうなんだ。おめでとう」

自然な関係に見えるよう表情や声音に気を遣う。静かになってしまった部屋に浩輔も戸惑ったようだ。

「もしかして、俺と朱里が別れたからってみんな気を遣った感じ?」

浩輔がそう言うと周りは「知らなかったんだよ、ごめんな―」とわざとらしく明るい声を出した。

「いいって。ケンカ別れとかじゃないから」

「そうなの?」

「お互い仕事が忙しくて、そっちを優先しようってなっただけ。だから変に気を遣うなよ」

何でもないことのように笑う浩輔を見ながら私は静かにレモンサワーを飲んだ。

< 59 / 148 >

この作品をシェア

pagetop