Sugar&Milk
「未練なんてないよ。私今彼氏いるし」
そう言うと浩輔は「そうなんだ」と呟いた。
「えー、彼氏どんな人?」
興味津々な声音にも「教えない」と冷たく返す。私は完全に不機嫌になってしまった。それが分かったのか周りももう私に話しかける人はいなくなった。今夜来たことを後悔する。浩輔が来るということを事前に知っていたら絶対に来なかった。
お開きになると二次会に行くぞとみんな盛り上がる。私は当初集まる予定だった2人だけに「帰るね」と声をかけて集団からこっそり抜けて駅に向かう。
「朱里!」
声をかけられ振り向くと浩輔が追いかけてくる。
「送るよ」
「いいよ。久々なんだからみんなとまだ飲めばいいじゃん」
「あー……いや……俺も帰りたいし」
「そうなの?」
「だから送ってく。途中までだけど」
「うん」
浩輔と一緒に帰るのはいいのだけど、今頃二次会に行った人たちは抜けた私たちのことを好き勝手に言っていそうで気分が悪い。
「雰囲気悪くしてごめんね。あいつらがあんなこと言うと思わなくて」
そう言われてもあの場の雰囲気を悪くしたのは浩輔ではなく私だ。つい嫌な態度をとってしまった。
「浩輔は悪くないよ。私がわざと機嫌悪いって主張していたから」
もう大学の関係者とは会いたくないから印象を悪くしてもいいと思った。だって人の恋愛事情に干渉してほしくなかったから。
「そっか」
浩輔は困ったような顔をして私についてくる。
「送ってくれるのは嬉しいけど、今どこに住んでるの? あの頃と変わってない?」
「俺は引っ越した。こっから2時間はかからないかな」
「遠いじゃん。いいよここまでで」