Sugar&Milk
「大丈夫。明日休みだし。朱里と電車乗るのも懐かしいから」
「そう……」
浩輔は私と同じ電車に乗り、自宅の最寄り駅で降りると改札までついてきそうで、さすがに申し訳なくなり「本当にここまででいいよ」と声をかける。
「駅からそんなに遠くないから一人で帰れるし」
「分かった」
浩輔が少し寂しそうな顔をするから私も居心地が悪くなる。
「あのさ、本当に今彼氏いるの?」
「え? うん。本当に彼氏いるよ」
「一応聞くけど、俺に未練があるから彼氏いるって嘘ついて気を引こうとしたとかじゃないよね?」
「何言ってんの。そんなわけないじゃん。みんなほんと何なんだろうね。復縁とかありえないし、浩輔も困ったでしょ」
無理やり笑顔を作るのに浩輔は「困ってはいないよ」と真剣な顔で私を見返すから困惑する。
「俺は今日朱里が来るって知ったから来たんだ」
「そうなの?」
私は浩輔に来てほしくなかったと思ったことは言葉にしないで飲み込んだ。
「俺たちやり直さない?」
浩輔の言葉と駅員のアナウンスが重なって聞こえる。けれど浩輔の声はしっかりと聞き取れた。目を見開く私が聞こえなかったと思ったのか浩輔はもう一度「朱里と付き合いたい」と言った。
「何それ……みんなに復縁の可能性とか言われたからってそうしなくてもいいんだよ」
面白い冗談を言うようになったなと笑ったのに浩輔はいつまでも表情を崩さない。
「浩輔? 冗談だよね?」
「真面目に」
「私、今はもう彼氏いるんだけど」
「本当に?」
「本当」
「そっか」
「…………」
妙な空気になってしまって考えがまとまらない。
「浩輔から別れようって言ったじゃん。私はあの頃はまだ関係を続けられると思ってたのに。今更やり直したいだなんて浩輔に言われるなんて思わなかった」