Sugar&Milk
瑛太くんは手を下すとホームの階段を駆け上がった。こっちに来るつもりなのだと気づいて今度は私が焦る。
「あの……浩輔はここまででいいから帰って」
「もしかしてあの人が彼氏?」
「うん……だから浩輔は行って。もうすぐ電車も来るし」
間もなくこちらのホームに電車が到着するアナウンスが流れる。
「若く見えたけど年下?」
「うん……」
「俺らより年下っていくつよ?」
「…………」
「まさか大学生?」
「…………」
「未成年ってことはないよね?」
「…………」
「え? マジで?」
浩輔の質問全てに答える気力が湧かない。瑛太くんが階段からこちらのホームに降りてくるのが見えた。早く浩輔に消えてほしいのに、電車はようやくホームに入り始めた。
「なんで学生と付き合ってるの? 仕事を優先する朱里が大学生となんて無理じゃね?」
「なんだっていいでしょ!」
怒りがついに口から溢れる。浩輔に今の恋愛にまでとやかく言われたくない。自分の価値観を押し付けるところは変わっていなくて怒りが何倍にも膨れ上がる気がする。
「だって俺と会う時間を作れなかったのに、どうしたらそうなるのか知りたいじゃん」
さらに怒鳴ろうと思ったところで冷静になる。浩輔と早く離れたい。瑛太くんにこんなところを見られたくない。
「浩輔とはもう会わない。復縁なんてできないから」
はっきり言ったところで「朱里さん」と瑛太くんに呼ばれる。目の前に立った瑛太くんは私と浩輔を見比べる。「どうも」と言った浩輔に瑛太くんは会釈した。
「俺のLINE気づいた?」
「え?」
スマートフォンを確認する余裕はなかった。元カレとどうやって関係を切るかに集中していた。