Sugar&Milk
「はい。彼女さんとはいえ気持ちを伝えるのを止める権利はないですよね?」
「そうですけど……」
「中山くんがあなたのことを好きなら、私から告白されても振るはずです。それでいいじゃないですか」
「でも……」
「もし少しでも私のことを意識してくれたら十分です」
この子は私がどう反論しても引こうとしない。驚くほど強気だ。
「えっと……瑛太くんに意識してほしいから告白なんて、手口としては汚いのではないですか?」
「そうは思いません」
私は泣きそうになる。年下の女の子に泣かされそうになる自分が悔しい。彼女がいるって知っているのに告白するなんてメンタルが強すぎる。それで瑛太くんの心を乱そうとするなんて私には考えもつかないやり方だ。それを彼女である私に正直に言うところも。
「彼女さんには私が告白しようとしてることを伝えます。それがフェアだと思うから」
「フェアかそうじゃないかではなくて、私たちのことに干渉しないでほしいと思っています」
「別に彼女いる男に気持ちを伝えちゃいけないなんて法律があるわけじゃないし。恋愛は自由。弱肉強食」
相沢さんが言葉の通じない違う種類の生き物に感じてしまった。目の前の未知の存在がただ怖かった。
「中山くんにそれを伝えても構いません。それで更に意識してくれたら私の勝ち」
「勝ち負けの問題じゃないのに……」
「先に好きになったのは私だから!」
相沢さんは声を荒らげた。
「ずっと好きだったのに……気持ちを伝えようとしてた時にあなたが現れたから!」
この大声に周りを歩いている人の視線が集まる。
「あなたは綺麗だし、ちゃんとした仕事もしてるんだから! 別に中山くんじゃなくてもいいでしょ!」