Sugar&Milk
◇◇◇◇◇



実家からアパートに帰ってきても朱里さんに会いたいと言うことは避けた。『お土産あるからそのうち連絡してね』とメッセージを送るのが精いっぱい。俺ばかりワガママを言っても朱里さんを疲れさせてしまうから。
本当は渡した合鍵でアパートに入って迎えてほしかったな、なんて思わないわけじゃなかったけれど。

新年初めてのカフェへの出勤で相沢は俺を見てなんだか気まずそうな顔をした。

「どうした?」

「彼女さんとこっちに帰ってから会った?」

「まだ。なんで?」

「別に」

「え、何? 気になるんだけど……」

「本当に気にしないでいいから」

不機嫌そうな顔でトマトを切り始めたから俺は気になりながらもそれ以上聞けなかった。
朱里さんがどうかしたの? 知りたいのに今日の相沢はなんか怖いんだけど……。

「こんばんは」

またも山本さんが店に入ってきた。今日も一人で来たようだ。

「いらっしゃませ」

「…………」

俺は店員として当たり前の言葉をかけても相沢は「いらっしゃいませ」すら言わなくなっている。愛想のない態度に笑顔で微笑む山本さんの姿勢には本当に驚かされた。相沢に気があるのが本当に分かりやすい。

「さっさと注文をどうぞ」

山本さんに向けての失礼すぎる言葉にハラハラした。一応お客様に対してこの態度は不味いのではないだろうか。

「優衣ちゃんのおすすめは?」

驚いて山本さんの顔を見た。この間まで『相沢さん』と呼んでいた山本さんは下の名前で呼んだのだ。

「ブレンド飲んでればいいんじゃないですか?」

「今日は優衣ちゃんのおススメを飲みたいな」

「シナモンロールラテ、塩キャラメルラテ、抹茶ラテ」

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