女子力高めなはずなのに
翌日、結局元気に接するどころか、井川さんとも槇村さんとも顔をあわせる勇気がなくて、業務課への確認事項は全部電話で済ませた。

業務課と営業課は同じフロアにあるから、行ったら二人ともいるかもしれない。

だから、ずっと経理課に閉じこもって仕事を黙々とした。

愛ちゃんが理恵を避けて私に超初歩的な質問をしてきても、一つ一つ笑顔で丁寧に教えてあげたりして。

井川さんの姿を見たい気もするけれど、こうして物静かに過ごして、井川さんとのやり取りが何もなければ、片想いの傷が疼くこともない。

こうやって過ごしていれば、もしかしたらいつの間にか忘れちゃうかも?

……そんなうまくはいかないか。


仕事もビシッと片付いたし、今日は残業もない。

一日一度もねずみ色を見ることができなかったのはちょっと残念だったけど、さっさと帰って家でテレビでも見よう。

何か面白い映画とかやってたらいいな。

そんなことを思いながら、いつもの帰り道を急いだ。
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