BOTANYUKI

もともと、二人だけの家族だったのでお葬式も簡単なものにした。

数人のタケルの知り合いが挨拶に来て、その人達も帰ってしまうと部屋は私とタケルだけの二人っきりになった。
私は棺の前に座るとボンヤリとタケルの顔を眺めた。

棺を前にしてもタケルがいなくなってしまったことを現実だと思えなくて、私は途方にくれた。
あまりにも突然すぎる離別に、私は最後にかける言葉も、涙すらも流すことができなかった。



「葵ちゃん!」

突然後ろから声がして、振り替えるとそこにルカが立っていた。

タケルの知り合いの誰かが連絡したのだろう。ルカは青ざめた顔でタケルの棺の前まで来ると絶句した。


「ルカ...来てくれてありがとう...」


そこまで私が言ったとき、
ルカに抱き締められた。


ルカは私を抱き締めると消え入りそうな声で「ゴメンね...」と呟き、そのまま子供のようにワンワン泣いた。

私はルカの背中を撫でてあげながら必死にルカを励まそうと言葉を探した。

だけど抱き締められたルカの体温や、時折自分の頬に落ちるルカの涙に触れ、やっとタケルが亡くなったことが事実なのだと実感が湧いてきて、気がつけば私もルカにすがりついて子供のように泣いていた。

それは近所の人がビックリするぐらい。
大きな声でワンワンと。

その日からルカは私の部屋で暮らすようになった。

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