BOTANYUKI
MASIRO


「ほら!気持ちいいね~!」

ルカが何もない公園のど真ん中で舞い散る雪の中、まるで雪やこんこの犬のように地面を駆け回る。

私は結局、ルカの強引な誘いに負けて近所の公園に来ていた。

そこは遊具も何もない公園で広場の端に大きな木が数本あるだけのところだ。だけどルカは嬉しそうに雪の中をクルクル回る。

私は広場の端にある大きな木の幹に凭れてその光景を眺めた。


「寒くないの?ルカ」

「全然大丈夫だよ!」


ルカは笑顔でそう答える。全く同い年とは思えない少年のような無邪気さだ。

だけど、先程まであんなにはしゃいでいたルカが急に立ち止まった。

辺りが突然静かになり、心配になった私がルカを見るとルカは真剣な顔で空を覆う真っ白な雪雲を眺めていた。

ふわふわの髪の毛や長い睫毛に降り積もる小さな雪を気にすることなく、ルカは真っ直ぐに空を見つめる。

その姿はまるでそのまま雪と共に雪雲に吸い込まれて消えてしまうのではないかと思うぐらい切ない光景で、私は胸が抉られるような痛みを感じた。

私はルカと暮らし始めてから時々ルカの中にタケルの存在を垣間見た。それはやはり幼馴染みとして長く時を共にした類似性と言うものなのかもしれない。

そして私は恐れてしまうのだ。

ルカもいつか、タケルのように忽然と私の前から消えてしまうのではないかという恐怖に...。


「ねぇルカ...」


いてもたっても居られずルカの名前を呼ぶ。ルカは今度こそ私の声が聞こえたのかこちらを向いてニコリと笑った。

「少し雪が強くなってきたから僕も雨宿り、ならぬ雪宿りしようかな」

ルカはそう言うと、私がいる大きな木の下にやって来てそのすっかり冷えきった身体で私と肩を並べた。



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