口の悪い、彼は。
 

「なかなか戻らないと思って探してたんだよ。ったく、こんなところにいたのか」

「す、すみません。ちょっと外の空気を吸いたくて」


はぁとため息が聞こえて、また呆れさせてしまったと、私はぺこりと頭を下げて謝った。

しかも部長に探させてしまうという手間まで掛けさせて……。

いつもこうやって部長に呆れさせてしまう私なんかが部長のことを好きだなんて、すごく迷惑だろうなと思う。

何か、自己嫌悪だ……。


「あぁ、なるほど。確かにここは気持ちいいな」

「!?」


部長はそう言って私の隣にすとんと座り、長い足を組んで外の景色を見つめる。

まさか部長が自分の隣に座ってくるとは思わなくて驚いてしまったけど、そんな驚きはすぐに捨ててしまって、私は部長の綺麗な横顔を見つめ始めてしまっていた。

3人掛けのベンチに一緒に座っていることもあっていつもよりもかなり近い距離にいる部長に、私の心臓はドキドキと速くなっていく。

その漆黒の瞳にはキラキラと色とりどりに光るネオンが映っていて、まるで宝石みたいだ。

きっと、その瞳には綺麗なものしか映さないんだろうな。

部長が好きになる女性ってどんな人なんだろう?

その瞳に映してもらえるのはどんな人なの?

喜多村さんや他の営業さんの話では、部長と一緒にいたという女性はすごく綺麗な人だって言っていた。

その中身もきっと、部長に余計な心配なんて掛けさせないようなできた素敵な女性なんだろうな……。

 
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