倦怠期です!
「9月から支払われていない慰謝料を払え」と言うため、お姉ちゃんがお父さんと会ったのが、月曜日の夕方の話。
駅近くのカフェに現れたお父さんは、「お金がないから慰謝料は払えない」と言ったそうだ。

「結局5万を一回振り込んで終わりか。ま、そんなことだろうとは思ってたけど」
「借金王に“お金払え”と言っても、払えないでしょ」
「まぁそれは分かっていたことだからねぇ。最初からあの人のお金をあてにはしてないけど」と諦め口調で言ったお母さんは、疲れきったため息を一つついた。

「あんな人と結婚した自分が情けないわ」

1年近くずっと家の中で言い争う二人を見てきた私としては、そう思うお母さんの気持ちは分からなくもないんだけど・・・。
「あんな人」でも、私にとっては一応「お父さん」なんだけどな。

私は、お母さんとお父さん、両方に対して同情しつつ、やっぱり結婚って面倒だと思った。
だから私は結婚しないし、誰とも恋愛しない。

「ねえお母さん」
「なに?」
「私のボーナス、ホントに使わなくてもいいの?」
「香世と美香は毎月お給料からたくさん生活費を出してくれてるからいいの。お母さんのパート代もあるし、それで十分足りてるから。ボーナスは自分の好きに使いなさい」
「うん・・・」
「美香もね」
「はーい。結婚資金に貯めておこうっと」

と言ったお姉ちゃんは、21歳。
高卒後、今勤めている旅行会社で事務をしている。

お姉ちゃんは、ひとりが好きな私とは違って、とても明るく朗らかな性格で、社交的だし、つき合ってる彼もいる。
「結婚資金」と言ったことから、お姉ちゃんは結婚する気があるみたい。
相手は今つき合ってる佐々木さんかな。

お姉ちゃんが26歳の佐々木さんとつき合い始めて1年半。
お父さんとお母さんが離婚に向けてゴタゴタしていたことが、逆にお姉ちゃんたちにとっては、愛の絆を深めることになったようだ。

もしお姉ちゃんが結婚して、ここを出て行ったら・・・お母さんと私の二人でも、やっていけるよね?
一瞬だけ不安的な疑問が頭の中をよぎったけど、私はすぐに「大丈夫だ」と思った。

ひとり暮らしの夢は破れるだろうけど、私一人でもお母さんを養ってみせる。

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