倦怠期です!
そして翌年の4月。
私はタハラ商事の東京本社へ行った。
中途・新人問わず、今期採用された社員は、まず初めに本社で研修を受けるというのが、タハラ商事の方針だ。

中堅商社にも関わらず、タハラ商事には、北は北海道から南は鹿児島まで支店がある。
でも中堅だから、支店の数は少ない。
全県に1支店あるわけじゃなくて、規模も小さい。

私が採用された横浜支店は規模が大きい方だけど、それでもワンフロアに全社員の約120名がいるといった具合。
それで規模が大きい方なのだ。

しかも東京「本社」は、横浜支店よりも規模が小さいというのは・・・謎だ。
それになぜか、神奈川だけには2支店あるっていうのも・・・中堅商社(タハラ)の方針なのか。

今期タハラに採用されたのは、私の他に11人いた。
つまりこの11人は、私の同期になるわけだ。
その中に有澤仁一郎がいた。
この人が私の未来の夫になるなんて、その当時はもちろん、想像すらしていなかった。




同期の内訳は、男子7人・女子5人の計12人。
男子は全員大卒の新規、女子はみんな高卒だけど、大阪支店の室井さんと宮田さん、千葉支店の牧さんは中途採用なので、この3人は、1週間だけ研修をして、それぞれの支店へ配属となる。
私と、富山支店の嶋田ちゃんは、同い年だし、研修中、同じ部屋のホテルに寝泊まりしていたこともあって、すぐ仲良くなった。

嶋田ちゃんは、北国の人だからか、色が白くて目がパチッとしてて、同性の私から見ても、とても可愛らしい顔立ちをしている。
うっすらとだけど、ちゃんとメイクして、ハイヒールを履いている嶋田ちゃんと、ノーメイクでスニーカーがよく似合う私は、同じ18歳でも、女性的年齢が天と地ほどに離れてるのが一目瞭然だ。
それに、22から25歳の中途のお姉さんたちは、きちんとメイクをして、相応の振る舞いをしていて、私から見たら、まさに大人の女性そのものだ。
中でも、長い髪をソバージュにしていて、当時流行していたDCブランドの服を颯爽と着こなしていた牧さんは、男子の間でも断トツに一番人気。
その話し方やあしらい方は、まるで銀座の一流ホステスさんみたいで・・・あくまでも私の想像だけど。とにかくそんな印象を受ける。
だけど、相手に媚を売ってるわけじゃなくて、私には全然ない女としての色気が、牧さんにはたくさんあって。
だからモテるんだろうなぁ、羨ましいなぁと思った。

でも研修以外の時間、有澤さんと牧さんが楽しそうにしゃべっている姿をよく見かけた私は、牧さんに嫉妬なんて一度もしたことがなかったし、有澤さんのことも、一男性として全然意識してなかった。
当時の私は、両親の不仲が最高潮に達していたこともあって、恋愛には全然興味がなかったから。

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