黒色女子を個人授業
わかっていたことだ。

私と彼は、上司と部下でしかない。間にあるのは仕事上の繋がりだけ。

その上で私を評価してくれた、それだけで十分じゃないか。

これ以上何を期待するっていうんだ。


目を瞑って自分に言い聞かせると、私は再び前を向いて歩き出した。

大丈夫、悲しいことなんて何もない。


駅の改札の前まで辿り着いて、私たちは足を停めた。

「だから、君なら大丈夫って保証するよ」

「ありがとうございます」

私にしては珍しく笑顔なんて作りながら答えた。

おかしいな、動揺してる。彼の目は見れなかった。


「じゃあ、気をつけて」

彼の言葉に「お疲れ様です」と軽く会釈をすると、私は改札をくぐり、そのまま振り返らずに早足でホームへと向かった。
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