黒色女子を個人授業
朝になり、会社へ欠席の連絡を入れようと、寝っ転がったまま携帯電話を手に取った。

部署直通の番号にかけると、受話器をとったのは若い声の男性だった。

おそらく今年入社したばかりの新人さんだろう。

彼のことはあまり接点がないのでよく知らないが、ひとまず欠席の旨を言付ける。

大城さんに伝えておいてくださいとお願いしたら、新人の彼は『大城さん、今出社されたんで直接繋ぎますね』と電話を保留にした。


伝言を伝えてくれるだけでよかったのに。

なんとなく、大城さんと直接話をしたくなかった。

昨日の別れ際の話題が思い起こされて、心に黒いもやがかかったような、嫌な気分になる。


ひとりでうろたえていると、ややあって、保留音が途切れ

『大城です』いつもの穏やかな声が聞こえた。


その声に胸がドクッと震える。

おかしいな。自分でもどうしてこんなに身構えているのか分からない。

なんだか息が苦しいのは、熱のせいだろうか。
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