彼に殺されたあたしの体
あたしの耳元のすぐ近くを何かが這う。


土を押しのけながらズルッズルッと長い体をくねらせるようにして動いていく。


これは……ミミズ?


動いている音はとても小さく、微かなものだった。


そして這っているという状況から推測して、それはミミズだろうと思っていた。


虫のたぐいは正直得意ではなかった。


あたしの顔のすぐ隣にミミズがいると思うと、鳥肌が立つ。


でも、同じ土の中にいる者同士仲良くしておいた方がいいかもしれない。


彼らからずればあたしの方が後から入ってきたのだし、状況によれば不法侵入といったところだ。


できるだけ角がたたないようにしよう。


だから、あたしはミミズが自分の顔を這い始めても我慢した。
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