Sweet Lover
がちゃ、と。
私がコウスケに引っ張られて玄関に立ち尽くしているうちにリビングのドアが開いた。

中から顔を出したのは、テレビでしかお目にかかれないような絶世の美青年。

すらりと伸びた手足、眉目秀麗、の四字熟語がぴったりな容姿。
どうして、そんな人が我が家にしかもスーツ姿でいらっしゃるのかしら。

ああ、何かの営業?

「君がマーサちゃんだよね?」

「……はい」

名前を呼ばれ、つい、条件反射のように頷くと、彼はにこりと微笑みその形の良い顔を崩した。

思いがけぬ甘い笑顔にどきりと心臓がはねる。
隣で、コウスケが面白くなさそうに舌打ちをしたけれど、その音も私の耳を素通りしていくほどぼーっとしてしまっていた。
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