LOVE SICK
「……最悪……」


ガンガンと痛い頭を押して起き上がった私は、自分の状況を見て思わず口から不平を零した。


痛い。
痛すぎる……
頭が、じゃなくて。自分が……


「……何これ」


私の場合、こうだった。


“目が覚めたら、行った事があるホテルの一室で、隣に誰もいなかった”

しかも“昨夜の記憶がしっかりある”

記憶なんて無くったって、身体に残った違和感が、何よりも鮮明に昨夜の事を物語っているから……
知らない振りも出来ないし……

せめて、記憶が無ければよかった……


失態の記憶なんて無い方が楽なんじゃないだろうか……


しっかりと閉ざされた窓は外部の音を遮断するから外の様子から何時なのかを推測することはできない。
けれど、窓の隙間を縫って微かに漏れてくるのは私の気持ちとは裏腹な爽やかな太陽の光……

間違いなく、朝だ。


そして更にこの状況を最悪にしているものが、ローボードに置かれたお札。

堂々と諭吉さんが三枚……

うん。好きだけどね。諭吉さん。
嫌いじゃないよ。決して。

けど、これは無い。


「……ホテル代がこんなにするわけないでしょ…」


思わずクシャリと握りしめた。

どういう意味だろう……お金で買われたって事?
それはすごく頭に来る。

ふとベッドサイドを見れば、開けられたばかりのカラフルな箱。
ホテルに備え付けられたそれは未開封。
ホテルに入る前にコンビニ寄った様な覚えもある。

どうやら彼は良識がある人だった様だ。よかった……

……こんな所に安心していい人かも、なんて一瞬思った私は本格的に終わってる……
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