LOVE SICK

甘みはワインと嘘つきな笑顔

けれど、そんなに毎日早く帰るなんて出来る筈も無い。
一昨日、無断欠勤した女の子が今度は辞めたいと言って騒いでる。

話して真面目に行くと少し不貞腐れながら言っていたのはたった二日前の事の筈なのに……



「川井。上手くやれって言っただろ」

「すみません……」


その事で、斎木さんに説教までくらう始末。


「お前さぁ、最近浮ついてない? 一昨日も問題起こした当日にさっさと帰ってくし」

「けどそれは……っ! カツキさんにも石野さんにもフォローは済んで……」

「言い訳してんじゃねーよ!」

「……」


斎木さんに怒鳴られて。
何か言い返そうと思ったけれど、悔しくて黙った。


確かに、クレームが起きた日に帰ったのは事実。

クレーム処理は終わってた。
けれど、周囲の心証は良く無かっただろう……

良くなかっただろう事に気が付いていても、私はあの日さっさと帰ったんだ。


「しっかりしろよ」


ぶっきらぼうに不機嫌に言い放った上司に書類を軽くデスクに投げつけられた。
斎木さんの言う事は事実だ。

けど。

それにしても……


「……支店長、機嫌悪くない?」


席に戻った私に耳打ちする田嶋君。


「だよね……」


私は視線を向けないように気をつけながら、小さな声で相槌を打った。

それにしても、今のは理不尽だ。

残念ながら、今回のクレームは珍しい事じゃ無い。
勿論そんな子を見抜けずに派遣してしまったのは私のミス。

けれど、スタッフの子のミスで謝りに行くのは、仕事の内ってくらいにはある事だ。

特に、若い人を扱う私の立場だと……多い。


「婚約者と何かあったのかな?」


そう言った田嶋君をチラリと見れば、


「お前ら無駄口叩いてる余裕あんのかよ!」


地獄耳らしい男から檄が飛ぶ。
首を竦めて席に戻った田嶋君を無言で見送ってから、溜息を吐いた。
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