今宵も、月と踊る

「し、志信くん!?」

「黙って部屋から出たお仕置きだ」

志信くんは私の頭を己の胸に押し当てると、そのまま布団を掛けてしまった。

はだけた浴衣から逞しい胸板がチラリと見える。

「ほら、もっと近寄れよ」

一人用の布団は身を寄せないと、どちらかの身体がはみ出してしまう。

志信くんの片手が腰を撫でると、私の体温は更に上昇した。慣れない状況に耳まで真っ赤になっていることだろう。

(やだ……。どうしてこんなにドキドキするのよ……)

私の方が8歳も年上なのに、てんで余裕がないではないか。

志信くんからは早くも規則正しい寝息が聞こえてきている。

(もう、ずるい!!)

こんなにも惑わされているとは露知らず、志信くんは既に夢の中だ。

こっそり彼の頬をつねると、少しだけ胸がすーっとした。

……その夜は、志信くんの鼓動を感じながら眠りについたのだった。

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