婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「うーん、ボチボチ、かな」祐介さんは、肩を竦めて言う。

「中谷さんのことだから、何社か内定もらってるんでしょー」

瑞希がチラリと見上げると祐介さんは微笑みながらノーコメントで交わす。

「お二人とも何系の企業を受けてるんですか?」私が尋ねる。

「俺はIT関連だなー」田中は顎に手を当てて言う。

「なんか田中さんがサラリーマンって意外ですね。ちゃんと会社勤め出来るんすか?」私が冷やかすと「当たり前だ。俺は長いものに巻かれる質だ」と田中はキッパリ言ってのけるが絶対嘘だ…。

「祐介さんは?」私が尋ねると佑介さんは一瞬目を泳がせた。

「しょ、商社を何社か…」祐介さんは口元を手で押さえながら言う。

「競争率高そう。でも世界を飛び回る商社マンなんて素敵ですね。活動的な佑介さんらしいです」

私はホウっとため息を着いた。

「中谷はシャチョーを目指すそうだぞ」

「田中!お前余計なこと言うなよ!」

祐介さんはカアっと頬を赤く染める。

田中の発言に瑞希はクスリと笑みを浮かべる。私は意味が解らず首を傾げた。

「打倒葛城商事ですね?」

瑞希は唇の端を上げて、ニヤリと笑う。

「意外と野心家だよな、中谷は」

「まあ、いい。何とでもいってくれ」祐介さんは赤くなったままコホンと小さく咳払いする。

「シャチョーは多分無理、だけど、それ位の意気込みで頑張るつもり。遠くからでもいい…から見ててよ」

祐介さんは真っ赤になりながら言う。

「はい、応援してます。自惚れてる御曹司の鼻を明かしてやってください」

「頑張るよ」佑介さんが照れくさそうに微笑んだので、私もにっこり笑い返す。
< 218 / 288 >

この作品をシェア

pagetop