心掻き乱れるほど恋い焦がれて


私、榎本綾奈と高桑翔太は、高校三年の時、冬服が夏服に変わる頃に付き合い始めて、大学は別々の所へ行った。
就職を機に一緒に暮らそうとしつこくしつこく言われたけど、私は最後まで無視し続けた。

暫らくして引越しの手伝いに来て、と言われて諦めたとばかり思っていたのに、翔太の引越し先はルームシェア前提の広いマンションで。
一人で家賃払うのは辛いんだけど?とか、全く悪びれることもなく私を背後から抱き締めながら言うから、そこはもう頷くしかなかったのだ。



翔太が強引なのはいつものことだし。
私だって本当に嫌だった訳じゃなかったし、寧ろ、そこまでして翔太が、私と暮らしたいって思ってくれたんだって思うと、付き合い始めた頃みたいにドキドキしたりなんかして。





あれから数年。四捨五入すると私ももう三十、という括りで。
翔太との付き合いも、十年を越えたことになる。改めて考えると、結構凄いかもしれない。




< 2 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop