俺様社長と秘密の契約
「その部屋のクローゼットの中の物、どれでもいいから勝手に出して着ろ」

「・・・・」

「そんな顔されても、服が出来あがってくるのは夕方だ。
それまでずっと、下着姿でいるつもりか?」


「そ!・・・そんなの無理です」
バタン!

血相変えてドアを閉めた理子は、言われた通り、クローゼットの中を探しているようだ。
理子の慌て様に、可笑しくなってクスクスと笑った。

・・・彼女は何も知らない。
確かに、ドレスをクリーニングに出したのは本当だが、別に出す必要はなかった。
彼女の着てきた服を店に忘れたのだって、確信犯だ。

…今日一日、彼女を独り占めしたかった。
こうでもしなければ、彼女はすぐに家に帰った事だろう。


…カチャ。
しばらくして、寝室から理子が出てきた。
…手足の長さが明らかに違う。体系だって、理子は細い。
今来ているジャージは、明らかに丈もチグハグで、裾を折って着ていた。

「・・・プ」
その姿があまりにも可愛くて、我慢しきれず、笑ってしまった。


「笑わないでください・・・
社長が、ドレスをクリーニングに出さなければ、これを着ずに済んだんですから」

理子は真っ赤な顔をしてぼやいていた。

「昨日、あんなに淫らに抱き合ったのに、ドレスが汚れたまま帰れたのか?」

「///!!」

俺の言葉に、赤い顔がさらに赤くなる。
…これも嘘だ。別に汚れてなどいない。…ただの意地悪だ。

「…コーヒーは?」

「…自分で淹れます」

「…他人の家のキッチンなのに、わかるのか?」

「…すみません、わかりません、お願いします」

そう言って頭を下げるなり、理子はソファーの端っこに、ちょこんと腰を下ろした。
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