俺様社長と秘密の契約
「…あの、私、高瀬専務に何か失礼な事でも?」
私は、不安な表情で伊織を見つめた。


「いえ、まさか。そんな事はただの一度も」

「それじゃあ一体・・?」

「貴女に込み入った相談がありまして」

「…相談、ですか?」

「はい、今日、仕事が終わったら連絡をください。
とても大事な事なので、必ず連絡ください」

「…今ここでではいけませんか?」

「…ここではちょっと、言いかねます」

…しばらく考えた私は、断る理由もなかったし、相談が、私で役に立てるならと、それを承諾した。
そして、お互いの連絡先を交換して、伊織は帰ろうとドアに手をかけた。


「…高瀬専務、どうしてここに?」

会議が終わった御堂社長が帰って来た。
御堂社長は、ここにいるはずもない人物を見て、驚くと同時に、怪訝な顔をした。

「…ちょっと、秘書さんに用がありまして。
あ、でも、もう終わりましたので、私はこれで失礼します。
お仕事中に失礼しました」

そう言って笑顔で一礼した伊織は、秘書室を出ていった。

・・・、秘書室に二人きりになった私と御堂社長。
凄く重たい空気で、ここにいる事が息苦しい。


「…社長、会議も終わった事ですし、コーヒーをお持ちします」
いたたまれなくなった私は席を立ち、給湯室へ行こうとした・・・が。

社長が私の手首を強く強く握りしめた。

「・・・あの、なにか?」

「アイツはここに何しに来た?」

「・・・」
どう言えばいいのかわからなかった。

「答えろ」
「・・・きゃ」

グッと自分の方に引き寄せた社長。
数センチの私たちの顔の距離、どうしていいかわからない。

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