今度こそ、練愛
偽装

日にちは迫るのに、私には頼る術がない。



社内で大っぴらに恋愛話をできるような人はいない。私と昭仁が付き合っていることを知っていた数少ない人たちの耳にも、私たちが別れたことはしっかり届いていた。
それなのに、別れて早々に彼氏を紹介してほしいなんて言えるわけない。



大学時代の友人とは疎遠で、年賀状と年に数回会う程度の付き合いだから問題外。



彼氏を紹介してとは言わないから、誰でもいいから、せめて一日だけ私の彼氏のフリをしてほしい。



このままでは実家に連れ戻されてお見合いさせられる。お見合いに抵抗があるのも事実だけど、それよりも田舎に帰りたくない。



ずっと幼い頃から上京することを夢見てきた。夢叶って大学進学のため上京して、小さくても設計会社に就職して、ここで生活できることを私は誇りに思っている。



それに田舎は交通の便が悪いから、どこへ行くにも車が必需品。車の運転が苦手な私にはとても生活しにくい場所なのだ。



思い切って母に話してしまおうか、実は彼と別れたばかりだと。



いやいや無理。



もう散々悩んでしまって仕事が全然捗らない。






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