今度こそ、練愛
午後、仲岡さんと一緒に近くの会社へ花を配達に出かけた。店から歩いて十分も掛からないから歩いていくことができる。車の運転をしなくてもいいことが、私には何よりもありがたい。
「仲岡さん、岩倉君ってここで働き出してから長いんですか?」
たわいない会話をしながらの帰り道、仲岡さんに尋ねてみた。
あまりにも態度が冷たいというか素っ気なくて、教えてもらおうと思っても話しかけにくい。高杉さんや仲岡さんが居る時はいいけれど、もし居ない時は……と考えると不安だ。
「うん、岩倉君は店がオープンした時から居るらしいよ、だから高杉さんと一緒。約一年前だね」
「一年前ですか……」
店は約一年前に、今の場所にオープンしたらしい。それ以前は他の場所に小さな店を構えていたという。
「彼も以前は会社勤めしてたらしいよ、最初はすごくとっつきにくいけど、慣れるといろいろ手伝ってくれるし気がつくし、いい子だよ」
「そうですね、私も今朝掃除を手伝ってもらったんです。だけどあまり話さないから怒られてるみたいで……」
「わかる、私も最初は苦手だったよ、クールだから多くは話さないっていうか……、彼の性格だろうね」
仲岡さんも私と同じように感じていたと知って少し安心。これから少しずつ、話せるようになれるかな。