勝手に百人一首







うたた寝の夢見が悪かったためか、エレティナはまんじりともできずに寝台に横たわっていた。






(ーーーだめだ、眠らなければ……)






明日は朝一番で身を浄める禊の儀式が行われ、その後も王宮を離れてから神殿入りまで、五つもの儀式が予定されている。




眠っておかなければ身体がもたない。





そうは思うものの、どうしても眠気は訪れてくれなかった。





エレティナは目を閉じて溜め息を洩らし、両手で顔を覆った。






そのとき。






ーーーーーこつん






微かな音を、エレティナの耳がとらえた。






「………?」






エレティナは怪訝に思い、ゆっくりと身を起こす。





すでに夜深く、王宮は静まり返っていた。





その圧倒的な静寂の中に、再び、こつん、と響く音。







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