How much?!
100円


「せんぱーい、小町せんぱ~い、準備出来ましたぁ~?」


明るめな可愛らしい声が更衣室内に響き渡る。


年の瀬も押し迫り、どこの会社も忘年会シーズン。

それはうちの会社も例外ではない。



今日は、私が勤務する大手量販店『Sourire』(スーリール)本社の忘年会が開かれる日。

早番の終業時間18時をとうに回っている今、更衣室には私と、私を呼ぶ彼女の2人だけ。


ロッカー越しに私を呼ぶのは、同じ部署の後輩・相澤志帆(25歳)。

ふんわりボブヘアーの彼女は、どこからどう見ても癒し系。

だけど、実際の彼女は、恋人と私以外の前では殆ど笑顔を見せない。

けれど、それが返って男心を擽るのか、彼女は社内でもかなりの人気だ。


そして、彼女が呼ぶ私、早坂小町(29歳)管理課主任。

大学卒業して入社し、今年で7年目を迎えた。


25歳を過ぎた頃から同期が次々と寿退社し、最近では後輩も次々と笑顔で寿退社していく。

三十路を目前に『恋』の気配すら無い私は、正直『結婚』しなくてもいいかな?と思い始めている。


仕事と健康に恵まれていれば、高望みはしない。

人生30年近く生きてると、無駄に『諦める』というスキルが身に着いた。



「はぁ……、行きたくないよ~」

「まだそんなこと言ってるんですか~?」



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