How much?!


爽やかな柑橘系の香りを漂わせた彼の腕は、私の身体を抱き寄せた。


「フッ、じゃあ、俺を満足させてみろよ」


低めの落ち着いた声色。

艶気のある瞳に惹きつけられるように視線が絡まる。


仄かに彼の口元からアルコールの香りがする。

今にも鼻先が触れそうな至近距離に思わず身体を仰け反らせると。

そんな私の身体をいとも簡単に元の場所へと戻す彼。


抱き寄せる腕に更にグッと力が籠められ、再び口角がキュッと上がった。

しかも、『NO』と言わせないようなオーラを纏って……。


「ッ?!………上等じゃないッ!!この私が、満足させてやろうじゃないの!!」



負けず嫌いな私は、綺麗な顔で平気で毒を吐く男の挑発に……まんまと乗ってしまった。

宣戦布告したからには、絶対に満足させてやるんだから!!

今に見てなさい?!

その飄々とした顔を歪ませてやるわよ、この私が!!

沸々と湧き起こっていたドス黒い感情が、今はメラメラと燃え上がる。

今にも唇が触れそうな距離に、落とす筈の私の方が音を上げそうだ。



「悪いが、俺そう簡単には落ちねぇぞ?」

「えぇ~そうでしょうね~!あれだけ毒を吐く男なんだから、そう簡単には落ちないでしょうね~!」

「フッ、お前、面白いな。まぁ、精々頑張れよ………チュッ」

「んッ?!かっ、覚悟しないさい?!どんな手を使ってでも、アンタを絶対骨抜きにしてみせるんだから!!」



額に悪魔の刻印でもされたかのように……。







売り言葉に買い言葉

LOVEバトルが今、幕を開ける―――


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