How much?!


「今日はゆっくり休め。あれだけ動けば、体が辛いだろ?」

「…………へ?」

「今日中に筋肉痛になればいいが………」


そう口にした彼は、お得意の値踏み視線を浴びせ、


「今日中に出て来るとは思えないな」

「ッ?!しっ、失礼ですよッ!?」

「フッ、やっと機嫌が直ったか」


サラリと毒を吐かれた上に、全て計算した上で話していたかと思うと頭に来る。

だけど、何だろう……?

もしかして、私が仕出しを手伝っていた姿を見てたって事?

じゃなかったら、さっきの言葉の意味が通じない。


志帆ちゃんが言ってったっけ。

車内を温めておいてくれるなんて、優しいって。

さっきのふらつきに対しても、このお弁当も。

もしかして、本当のあなたは…………優しい人なの?


ドアノブに手を掛けたままで固まってしまった。

脳内が混乱して、言葉が出て来ない。

もしかしたら、これ全て彼の手口なのかもしれないが、どこまでが本気なのかも分からない。

もう、頭の中がぐちゃぐちゃだ。


「送って下さって、ありがとうございました!」


ほんの少しだけ彼の方を向いて、軽く頭を下げた。

そして、彼の視線を振り切るようにドアを開けると、ドアノブを手にしてない方の腕を掴まれ引き戻された。

そして、私の耳元に唇を寄せた彼。


「今日の小町は、その寿司くらい……だな」

「………え?」


そう言い終えた彼は私の身体をポンと押し、その弾みで車から降りると、彼は長い腕で助手席のドアを器用に閉めた。

そして、クラクションを2回鳴らし、その場を後にした。


手にしている助六寿司に視線を落とすと、そこには税込み『518円』と記されていた。


< 52 / 290 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop