How much?!


ソファにボスッと倒れ込み、いつもの癖で無意識に視界で捉える、とあるモノ。


はぁ……。

漸く終わるかと思ってたのに……。


俺は沈み込む重い身体を起こして、そのモノを手にした。

そして、再びソファに座り込み、マジマジと見つめる。


「おい、お前、この期に及んでまだ食う気かよ。いい加減、満腹になったらどうだ?」


馬鹿馬鹿しい独り言が部屋のどこかに消えてゆく。

俺が手にしているのは、イルカの形をした貯金箱。

結構な大きさでパッと見、貯金箱には見えない。

だから気に入っているというのもあるが、本当の所、理由は違う。


これは以前、彼女の携帯に付いていたストラップと同じデザインのもの。

アメリカの有名な画家が描いた作品の中のイルカで、かなりプレミアム的な存在のモノ。

彼女の好きなモノに触れてみたくて、わざわざネットで注文して購入した。


本当はお揃いのストラップが欲しかったが、限定の商品だったらしく、手に入れる事は出来なかった。

だから、彼女との縁をこのイルカに賭けて、俺はこの貯金箱に彼女への想いを込めている。

………毎日500円ずつ。


3年近くも入れ続け、一体幾らになった事やら……。


俺は徐にテーブルの上に取り出してみた。




―――――495,000円


日数にして、990日。



まだまだ終わりが見えない状況に、溜息が零れ出す。

一体、幾ら投入したら終れるんだ……。


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