年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
先にオムライスと、ソーセージの盛り合わせが運ばれてきた。

私がいただきます、と早速スプーンに手を伸ばすと、祥裄はビールを追加する。今日は意外とハイペースだな、とちょっと心配になった。


「なあ、お前、泣いた?」

「は?」

「別れた時だよ。一人になって、泣いた?」


泣いたとも、雨の中びしょ濡れになって、大声で泣いたとも。そんなことを聞いて、何がおもしろい?


「多分泣いたんだろうな。お前、絶対一人になってから泣くからな。……そんなのわかってたはずなのにな」


私は否定も肯定もしなかった。ただ黙ってオムライスを食べ続ける私に構わず、祥裄は一人で話し続ける。


「お前、仕事で会えなくても文句言ったりしなかったし、自分も仕事優先したし。
初めはそれを望んでたはずなのに、いつの間にか、お前には俺は必要ないんじゃないか、って思うようになってた。

お前の世界はお前一人で完結してて、俺はいてもいなくても大差ないんじゃないか、って。

だから絵里に俺が必要だ、ってストレートに頼られて、素直に嬉しかったんだよ。
……今思えば、お前だって俺と一緒にいる時は、ちゃんと頼ってくれてたのにな」


気遣いあえている、と思っていたことが裏目に出て、互いに無関心だ、と思うことに繋がったんだろう。

私だって、祥裄が見守ってくれていることに甘えて、きちんと気持ちを伝えることを疎かにしていたのかもしれない。


「可愛げない、なんて言って悪かった。お前、十分可愛いよ」


……本当に、なんで今更そんなことを言うのだろう。
髪と一緒に祥裄への気持ちは綺麗さっぱり捨て去って、私はこれから新しい道を歩もうと決めたのに。
< 112 / 462 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop