マネー・ドール
 門田真純は、俺の手を握って、俺の唇にキスをした。
そのキスは、軽くなくって、門田真純は俺の舌を舐めたり、噛んだりして、俺は、門田真純のおっぱいを握った。
門田真純は俺の膝に跨って、耳とかうなじとかを噛んだりして、俺は門田真純のワンピースを肩から外して、ブラのホックを外して、間近でその迫力を目の当たりにした。
胸元は少し日に焼けていたけど、胸は真っ白で、真ん中は真っピンクで、俺は無意識にしゃぶりついて、吸ったり、舌でコロコロしたり、指でクリクリしたり、谷間に顔をうずめたりして、門田真純のおっぱいを堪能した。
扇風機の回る音に混じって、門田真純の声が漏れて、俺の息も荒くなって、俺達はただ、目の前の俺達に夢中だった。
「ガマン、できないよ」
俺は門田真純を硬い、古ぼけた畳に押し倒した。門田真純は、血走った俺の目を見て、目を閉じた。
いいんだよな……なあ、俺もう、無理だよ? もう、止まらないよ……
俺は、スカートの中に手を入れて、地味な無地のパンツに手をかけた。
門田真純が、微かに腰を浮かした瞬間、けたたましく、チャイムが鳴った。
俺達はドキッとして玄関を見た。何回かチャイムが鳴って、門田真純はブラをつけて、ワンピースを着て、髪をまとめ直して、玄関へ行った。

「回覧板ですー」
「ああ、すみません……」
「ねえ、真純ちゃん、今度の工場長、知ってる?」
どうやら社宅の回覧板が回ってきたようだ。近所のおばさんらしき人は、十五分ほど新しい工場長の噂話をして、帰って行った。

「回覧板?」
「うん」
残念ながら、もうそんな感じじゃなくなって、門田真純は、そろそろ買い物に行くと言った。
一緒に部屋を出て、自転車置き場に行くと、車じゃないんだね、とちょっと残念そうな顔をした。
「修理中なんだよ」
セルシオあっての俺、か。
俺は自転車を押して、駅前のスーパーで、また明日、バイトでね、と別れた。

 しかし……門田真純……エロかった……俺のこと、好きなのかな。
だって、キスしてきたのは門田真純からだし、膝に跨ったのも門田真純だし、わかんないけど、嫌いじゃないことは確かだ。あんなこと言っちゃったけど、明日会った時に、冗談だよって言えばいいよな。

 でも、次の日から、門田真純は塾に来なくなった。どうしたんだろう。風邪とかかと思ってたけど、結局、そのまま門田真純は塾を辞めてしまった。
 とりあえず、俺は門田真純が受け持っていた数学もやることになったけど、相変わらず俺はガキどもから嫌われていて、授業もわかりにくいと保護者からもクレームが来て、塾長からも、イケメンを生かせるバイトの方がいいんじゃない? なんてクビ通告されて、俺も二学期いっぱいで塾を辞めた。

 その間も、ずっと門田真純のことは気になっていて、時々昼間に社宅に行ってみたけどいつもいなくて、事故にでもあったのかと思って、少し遅い時間に家へ電話をかけてみたら、杉本が出た。
「あの、佐倉だけど……」
「おお、久しぶりやのお」
杉本はちょっと元気がない。
「あのさ、門田さん、いる?」
「え? 真純?」
やば……もしかして……あのことがバレて、別れたのかも!
「今、バイトいっとるんよ」
「バイト?」
「なんや……いかがわしい店で働いとるみたいで……」
い、いかがわしい店!
「風俗、とか?」
「そこまでやないけど、ホステスとかコンパニオンとかやっとるみたいじゃ」
「そうなんだ……」
「昼間も学校いっとらんみたいやし、どうしてもうたんか……」
まさか……俺のせい?
「真純に、何か用事やったんか?」
「え? いや、あの、急に塾辞めたから、なんかあったのかと思って……」
「心配してくれたんかあ。悪いなあ。まあ、元気は元気じゃけ」
「なら、安心だよ」
「電話、あったことゆうとくけ」
「ああ。また、飲みに行こうぜ、杉本」
「そうじゃなあ。今、年末で忙しくてな。年度末までは忙しそうじゃ」
杉本は社会人ぽい発言をして、ため息をついた。
「大変だね。頑張れよ」
「ああ、ありがとう」
電話が切れて、俺もため息をついた。
門田真純……やっぱり、俺なんかに頼るのはバカらしくなって、自力で稼ぎ出したのかな……そうだよなぁ。俺なんか、所詮、親父の金でできてんだもんなぁ……
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