残業しないで帰りなさい!

『間違ってはいないけどさ、そういう関係もいいけどさ、香奈の発想ってホント小学生レベルだよね』

「悪かったね、レベル低くて」

瑞穂先生は私のレベルの低さを嘆いているらしい。だって!しょうがないじゃない!

『そんなんじゃ、飽きられちゃうよ』

「えっ!……そう、かな」

考えてみたら、課長は久保田係長みたいな綺麗な人とお付き合いしてたわけだし、比べちゃったら私なんて芋みたいなもんだよね……。

『あっ、落ち込んでる?アハハッ、ごめん、ウソウソ!アンタの彼なら大丈夫だよ。大人だし真面目な人っぽいから』

「……うん」

それは本当にそうだと思う。

『私、大事にします、なんて言われたことないよ。それ、羨ましーな』

「ホント?」

恋愛大先生の瑞穂ですらないんだ。

『でも、その台詞とか年齢から察するに、彼は本気っていうか、これが最後の恋って気持ちなんじゃないのかな?』

「最後の、恋?」

『つまり、結婚を意識しているってこと』

「ええっ!?」

そんなこと、全然考えてなかった……。
課長だってそんな雰囲気、全然なかったし。

「……そんなことないよ」

『いや、絶対そうだよ!だからこそ、堂々と付き合ってることを公にしたんだろうし、そうすることでアンタを逃がさないように囲い込んでるんじゃないの?』

「そう、なのかな……?」

課長にとっては最後の恋?そんなの私だって最後の恋にしたい。だって……、最後じゃなかったら、課長と別れるってことでしょ?

お付き合いするイメージもよくわからないのに別れるなんて想像もつかない。

そんなの考えたくもない。
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