嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 今日の私、斉藤支部長の奥様からあれしてこれしてと言われた指示をこなしているだけなんだけど、いいのかな。

 しかも、食事が出来上がってみんなで食べる時になって、調理器具を洗って台所の掃除をしておいて、と言われて洗い物をしているんだけれど、奥様たちの輪に入らなくていいのかな。

 特にみなさんと話したいことがあるわけでもないし、天ぷらなんて自分でも作るから別に食べたいわけでもない。

 むしろ、私は一人の方が気が楽だから、奥様たちの会話に入るよりこうして一人でいる方が楽なんだけど、こんな勝手に一人で離れて行動していて、空気を乱していないかな。

 気になったのはそのくらい。台所をきれいに片付けてシンクを磨いて、床の拭き掃除とかをしてピカピカに仕上げた頃には食事は終わってしまっていた。

 ちょっと食べたかった気もするけど、まあいいや。台所がピカピカにきれいになったから、良しとしよう。

 そんなわけで、家に帰ってから隼人さんに「どうだった?」と聞かれても、何と表現したらいいのかわからず、「なんか、みんなで集まって日本食を作る会でした」としか答えられなかった。

「無理に参加しなくていいんだよ?」

「でも、気楽に参加できたので大丈夫です」

「そう?」

「はい」

 本当と言えば本当のことだった。

 そして、翌月もお誘いされて、やっぱり同じようにお掃除をしている間に食事は終わってしまった。

 今回作ったのはぶりの照り焼き。

 そんなに食べたかったわけでもないし、仕方ない、なんて思っていたら、阿久津課長の奥様と目が合った。その時、彼女はとても困った顔をした。

 あれ?やっぱり私、あの輪の中に入るべきだったのかな?もう少し空気を読むべきだったのかもしれない。今度からはがんばってちゃんとあの輪に入ろうかな。
< 17 / 134 >

この作品をシェア

pagetop