コンプレックスさえも愛されて。



彬さんの手のひらが胸に触れた時は、ビクッと身体が竦んで、涙が出そうになったけど。
彬さんの手は躊躇わなかったし、笑わなかったし、優しく包んでいつまでもいつまでも愛撫をしてくれたから。



怖いとか、彬さんに応えられないとか、そんな事を考える余裕はどこにもなかったし、彬さんは私に、そんな無駄な事を考える隙すら与えてはくれなかった。





「沙耶香すっげぇ可愛かった……俺幸せ」

彬さんが自分の膝に私を横抱きにする。



本当なら恥ずかしくてどうしようもないはずだけど、ありがたい事にここの温泉は茶褐色だから、湯船に浸かってしまうとほとんどなにも見えないから。
彬さんはそれに気付いた時に悔しがっていたけど、それじゃなきゃ一緒にお風呂になんて入れません!って言ったら、じゃあいいや、ってアッサリ趣旨換えしていて笑ってしまった。



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