ワンルームで御曹司を飼う方法

 
 なんて展開だ。今まで顔も見たことなかった自分の職場の社長(いや、正確には親会社の社長?)に偶然会ったと思ったら、いきなり直々に頼み事をされるなんて。

「で、でも私。なんの資格も無い派遣ですし、その、難しいことは何も」

 焦ってまごまごと拒否していると、結城社長は否定して振っていた私の手をガッシリと握り眼力の強すぎる瞳で私をじっと見つめてきた。

「大丈夫。とっても簡単な事ですから」

「でも、あの。無理です。自信ないです」

「そんな事を言わずに、どうか私を、我が社を助けると思って」

 ひええ。そんな重大な頼みを何故偶然会ったばかりの私に託してくるのか。逃げ出したくなるプレッシャーで背中に汗が伝うのを感じながら

「そもそもどんな頼みごとなんですか?」

と、固唾を飲んで尋ねてみれば。結城社長は引き締まった凛々しい顔を突然パァッと破顔させ、おどけて甘えるように小首を傾げながら言った。


「一晩泊めて?」


 10月3日。花の週末金曜日。
この日、手取り13万で暮らすワーキングプアの私は、とんでもないペットを――我が社の社長を、拾った。
 
  
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